研究概要 |
ヒオウギPSP成分:有毒ヒオウギChlamys robilis中腸腺を常法により, 80%エタノール(PH_2)で抽出し, 脱脂綿, 限外〓過し, Bio-GelP-2およびBio-Rex70を用いるカラムクロマトグラフィーに付して毒を精製し, 得られたPX, GTXおよびSTXの各画分をHPLC, 電気泳動およびTLC分析に付したところ, PX画分はPX_<1, 2>, GTX画分はGTX_<5, 6>の既知両成分のほか未知の2成分, またSTX画分は未知の2成分からなっていた. 主要成分であるSTX画分の未知成分については, 諸性状からdecarbamoyl saxitaxin(decarbamoyl STX)と推測されたので, これを調整して, 各種分析に付してその異同を調べたところ, 両者は一致し主要未知成分をdecarbamoylSTXと同定した. ヒオウギ各組織ホモジネートのPSP変換能:ヒオウギPSPは既知PSP成分を殆んど含まないユニークなもので, これは, この貝の体内のPSPを変換させる作用によると考えられたので, 各部位(鰓, 足, 解柱および内蔵)のホモジネートにマガキCrassostrea gigasの部分精製毒を加え, インキュベートしたところ, decarbamolSTXの生成が内蔵ホモジネートを用いた場合にのみ認められ, 変換酵素の存在が示唆された. 関連してマガキ毒の代りにホタテガイPatinopecten yessoensisの部分精製毒を使用したところ, decarbamoylSTXの生成はほとんどみられなかった. 各種処理後のヒオウギ内蔵ホモジネートのPSP変換能:ヒオウギ内蔵ホモジネートにPSP変換酵素の存在が示唆されたので, このホモジネートを加熱酸およびエタノールで処理した後, マガキ毒に対する変換能の存否について検討した結果, いずれの場合もPSP変換能がほぼ完全に失われた. これはヒオウギ内蔵ホモジネートのPSP変換能力が何らかの酵素による可能性をさらに強めるものと考えられた.
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