研究概要 |
本研究は養魚飼料に最も適したエネルギー標示指標を明らかにする目的で行った. そこで, 魚の場合には可消化エネルギー(DE)が最も測定し易いと考えられるので, 先ずDE測定方法を比較した結果, サイフォン法が最も簡便で他の方法と比較してもエネルギーの消化率に差のないことを明らかにした. この方法を用いて, 現在養魚用飼料に広く配合されている動物性および植物性原料のDEについて測定した. その結果, 4種類の淡水魚において, 各飼料原料のDEは魚のサイズにあまり影響を受けず, 水温の上昇に伴い, 増加する傾向が見られた. また, これらの原料を組み合せて, 実用飼料を作製し, ニジマス等について間接法により実測したDE含量と飼料の原料組成から計算によって求めたDE含量と比較した結果, 両者の値がよく一致し, 本実験で得られた結果は実用飼料のDE含量の算定に有効であることがわかった. 次にタンパク質の質およびタンパク質・エネルギー比を変えた飼料の可消化養分総量, DE, 代謝エネルギー(ME)および正味生産エネルギー(NE_p)値を求め, 次いでこれらの飼料を用いて行った飼育実験おおける魚のパーフォーマンスとき間の相関から, 飼料素材のエネルギー価としての最適な指標, 比較的測定の簡単なDE値からのタンパク質の質により大きな差を生じるMEの簡便推定法の確立, 等を調べた. その結果, タンパク質の質を数量化した必須アミノ酸指数とDEを乗じた値と魚のパーフォーマンスとの間の非常に強い相関関係から, 代謝エネルギー=2.16+0.0044×(DE×EAA指数)及びNEp=-3.07+0.0126(DE×EAA指数)という推定式が得られ, この式を実用飼料に応用してもかなり精度の高い推定値が得られた. これらの結果から, 魚類においても, 魚を飼育し実測することなしに, 養魚飼料のDE, MEおよびNEp値を推定することが可能となり, 本研究をさらに応用することにより, 家畜動物と同様のエネルギー標示ができることになる.
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