研究概要 |
マングローブの1種, ヒルギダマシを飼料として利用するための基礎的検討を行った. マウスでの腹腔内毒性試験では, 50,000ppmの高濃度でも致死作用は認められなかった. 粗蛋白含量は, アルファルファ, ギンネム, ヒルギダマシの順に多かったが, ラットでの成長試験では, ギンネムより良好な生育状態を示した. ヤギ(6ヶ月齢)による給餌試験では, アルファルファ, ヒルギダマシをそれぞれ単独で, 3頭ずつに与えた. 慣らし期間の後の7週間の平均増体量(週当り)は, 前者で810g, 後者で670gであった. 後者に, 飲水量が顕著に多い事が認められた. 葉と種子の6成分含量(水分, 粗蛋白, 粗脂肪, 粗繊維, 粗灰分, 可溶無窒素物)及び栄養元素組成(N,P,K,Ca,Mg,Mo,Cu,Fe,Mn,Zn,Na)を調べ, アルファルファと比較した. 葉の成分含量や元素組成に時期的変動は認められず, 種子では可溶無窒素物が顕著に多かった. 葉の6成分含量は, 可溶無窒素物がアルファルファより多く, 粗脂肪はほぼ同じで, 他は少なかった. 栄養元素組成は, Na,Mg,P,Mnが高く, 他は低かった. 特にMaは, 9倍と顕著に高い. 刈取りの程度と回数を変えて, 年間合計収量や再生状態を検討した. 古い枝まで刈取る, 強度の刈取りでは枯死する. また, 頻繁な刈取りでも枯死するものがでた. 合計収量は2回刈りが最大で, 以下3回刈り, 4回刈り, 1回刈りの順である. 種子生産の豊凶の差は大きく, 種子や雅樹への波や流れの物理的影響と, 貝やカニによる食害の影響も大きいが, 発茅率は高い. 挿し木は困難であるが, 取り木は可能である. 塩系濃度に対する適応範囲は広いが, 被陰に対しては弱い. 以上の検討から, ヒルギダマシは他の牧草と比較して質的に遜色ない事, Naが顕著に多い点と特徴でもあり, 配慮の必要もある事造林も充分に可能な事等, 基礎的事項が明らかになった.
|