研究概要 |
(1)ヤギおよびブタ副腎潅流標本では, アセチルコリン(Ach)刺激によるカテコールアミン(CA)分泌にはニコチン(N)受容体が関与していた. 一方, イヌ, ネコ及びモルモットの場合には, ムスカリン(M)受容体とN受容体が関与していた. 低濃度Ach刺激ではM受容体を介する反応が優勢であった. (2)N受容体刺激によるCA分泌は細胞膜の脱分極と外液Ca^<2+>濃度に依存しているのに対し, M受容体刺激は必らずしもそれらを必要とせず, 細胞内に貯蔵されたCa^<2+>の動員によって発現すると推察された. (3)カフェインはM受容体刺激と同様, 外液Ca^<2+>不在下でもCA放出を起こし, これらはともに細胞内Ca拮抗薬であるTMB-8によって抑制された. (4)イヌ副腎髄質切片では, AchはM受容体を介してCA放出を起こした. この標本にCa^<2+>蛍光指示薬であるFuraIIAMを取り込ませた後, Achを投与すると細胞内Ca^<2+>濃度が増加した. (5)リン脂質代謝を抑制し, イノントール・三リン酸(IP_3)を増加させるLiイオンは, M受容体刺激によるCA放出を増加させた. これはM受容体刺激がIP_3を増加させ, IP_3が細胞内Ca^<2+>の増加を起こし分泌反応を惹起させるという仮説と一致している. (6)M受容体刺激によるIP_3の役割をさらに調べる目的で, イヌ副腎からの髄質細胞の分離精製を行った. その結果, 髄質切片をコラゲナーゼ処理することにより得られた粗製分離細胞の30%が髄質細胞であったが, パーコール直線密度匂配遠心法を用いることにより, 分離細胞の80%が髄質細胞となった. (7)これらの精製副腎髄質細胞はAch刺激によりCA放出を起こし, その放出量は粗製分離細胞の最大放出よりも約2倍に増加した. (8)分離細胞の純化精製に伴い, 潅流標本で得られた外液Ca^<2+>に依存しないAChによる放出反応は消失した. (9)現在さらに, 細胞分離法の検討や培養等を行い, 生理的放出機構を保持した細胞系を得るための実験を行っている.
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