研究概要 |
1.家畜における体細胞遺伝学の一環としての染色体上の遺伝子のmappingは, 遺伝子操作技術や遺伝的疾患の解明のための基礎的研究として重要であると思われる. 今回, 昭和61〜62年度にかけて, 体細胞雑種に必要な選択培地の検討, 細胞融合の確立, 雑種細胞の確立その染色体分析およびAg-NOR染色法とinsitu hybridization法による遺伝子の染色体上のmappingを試みた. 2.豚由来の単層培養細胞はウアバイン(O)添加培地で死滅するが, HAT培地では増殖した. また酵素欠損のA9株細胞はO添加培地では増殖したが, HAT培地では死滅した. これに対して雑種細胞はHAT, O培地でともに増殖することが認められ, 体細胞雑種の作製にはHATO培地が最適と思われた. 得られた雑種細胞ではA9株細胞の染色体はそのまま保持されていたが, 豚の染色体ではその一部が消失していた. また豚の染色体NO.10は調べたいずれの体細胞雑種でも消失していた. 3.豚で作製した染色体標本上に50%硝酸銀水溶液を滴下し, 50°Cの高湿度下で2-5時間処理したのち, ギムザ染色して, 染色体のAg-NOR染色を試みた. その結果, 豚では染色体NO.10の二次狭窄の動原体近傍に濃染するNOR染色像が認められ, 他の染色体上にはこれが認められなかった. また個体によって, 一対・2個の染色体NO.10の二次狭窄部位に認められるNOR染色像の大きさに変異があった. 4.insutu hybridization法によってrDNAプローグを豚の染色体上に分子雑種形成させた. オートラジオグラフィ, ギムザ染色によって標本を作製し, rDNA遺伝子の染色体上の位置を求めた. その結果, 豚では染色体NO.10の動原体部位に多数の銀粒子が観察され, この部位にrDNA遺伝子が局在していることが認められた. また細胞によって, 2個ある染色体NO.10上に観察される銀粒子の数に変動があった.
|