研究概要 |
本研究は視床諸核と皮質との結合関係において従来からの単一視床核と単一皮質野の結合という概念に変わって, 複数の視床核と複数の皮質野の結合が行われているという証拠が多くの種類の動物において見出されていることに鑑み, 視床以外の皮質下諸構造からの入力を含め, 形態学的にその詳細を明らかにすることにより, 皮質-視床間結合の見直しを行うことを主目的としている. 特に本研究においてはそのモデルシステムとして視覚領皮質への入力機構の解明にあたった. 上記の観点からの分析により得た結果は以下のとうりである. 1.皮質17野へ投射する皮質下構造の同定. 2.1において同定された構造からの視覚関連野での終止の様態の差. 視覚領皮質へは多数の皮質下構造からの入力が見られる. これらは, 終脳では前障の他, Meynertの基底核, Brocaの対角帯核さらに中隔核, また間脳では外側膝状体背側核, 枕核外側端, 後外側核さらに髄板内核群に, さらに中脳では腹側被蓋野や縫線核の一部の構造が含まれる. 上記の皮質下起始部からの皮質での終止層と拡がりにも違いが認められる. それらは, (1)外側膝状体背側核からの終止層では, A, AI層からは17野VI層とIV層中心部, C層の大細胞層からはVI層およびIV層の表層と深層部, さらにC層の小細胞部からは皮質V, III層深部とI層に終止している. これらの終止は皮質での拡がりでは, I層の終止の拡がりは他の層より広い. (2)後外側核からの17野での終止は外側膝状体背側核の大細胞C層からの投射と類似の終止様態を示し, V, I層に終るが, それとは異なりIII層への終止は存在しない. 一方同一部からのシルヴィウス外回での終止はIV層を中心に存在する. (3)髄板内核, 中脳起始部からの投射は広くI層に終るが, 視覚領を越えて終止し, 特に中脳部からのものは層全体に広がっている. さらに前障からの終止はII層を除く全層に広がって終止している.
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