研究概要 |
キンギョの聴器(子嚢)を剔出し, 酵素パパインを用いて個々の有毛細胞を分離し, パッチクランプ法を用い次の各項目について調べた. 1.機械刺激変換チャネルの研究. 細胞全体クランプ法のもとで膜電位を固定し, 細胞の毛に与える屈曲刺激により生じる電流を観察した. 成功例は8例にとどまっているが手枝の不完全な所を改善するように努力している. 2.膜電位振動の研究. 細胞全体クランプ法のもとで膜電流を固定し, 膜電位変化を記録した. 矩形波状の電流通電に対して2種類の応答があることを見出した. 1つは50から200Hzの膜電位振動を示すもので, 小嚢前部に多い卵形や短い円筒状の細胞に見られ, もう1つは緩徐な脱分極とそれに引き続く活動電位発生のあるもので, 小嚢後部に多い細長い細胞に見られた. 後者では自発的活動電位発生もみられた. 3.膜電位固定下におけるイオン電流の研究, 細胞全体クランプ法のもとで膜電位を固定し, 外液のイオン組成を変えたりブロッカーを加えたりした状態で膜電位ステップによって活性化される特定の電流成分を観察した. 固定できたのはCa電流, Ca依存性K電流, A電流内向き整流性K電流であった. そのほか脱分極に対し一過性内向き電流が見られたが, これは未だ固定できていないがNa電流である可能性がある. 4.単一チャネル記録によるCa依存性Kチャネルの研究. 細胞膜のごく一部をパッチ膜として取り出しそこに存在するCa依存性Kチャネル(BKチャネル)を観察した. これは単位コンダクタンスが250pS前後のKに選択的透過性のあるチャネルであった. 内側のCa濃度を5μMとして膜電位ステップに対する応答の平均をみると5ms以下の短い時間でプラトーに達するような速い応答をするチャネルであることがわかった.
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