研究概要 |
α-アミノアジビン酸(α-AAA)のグリア毒性の選択性を探るため, そのD型, DL型, L型α-AAAをコイ眼球内投与し, 直後(2〜4時間)から長期(1〜2カ月)に亙って種々のグリアマーカーを神経網膜を用い追跡した. グリアマーカー酵素であるグルタミンシンセターゼ(GS)活性を見てみると, 8μmolの投与で急速なGS活性の減少を招来し, 1〜2日後に最も活性が低かった. その後ゆっくりとGS活性はコントロールに復した. 活性低下の順はL型>DL型>D型の順であり, 回復はその逆の順に復した. またこの時SDS電気作動上に可溶性タンパクの増減が認められゆっくりと回復した. グリア細胞起源と云はれるERGb波を見てみると, 急速なb波の減弱消失が招来され, その後D型(3〜5日), DL型(7〜10日), L型(3〜5週)の順にゆっくりと回復した. しかしL型によるb波消失からの回復は非常に長期間観察でもコントロール値に比べてずっと小さかった. 次いで形態学的観察を薄切切片を作製し見たところ, D型には著変なく, DL型α-AAAにより著しいニコーラ細胞(網膜の唯一のグリア細胞)の腫脹が認められ, L型ではより強い腫脹腫大と, 網膜内層の虫喰い状変性像が見られた. これらの形態変化は, その後ゆっくりと回復してきた. 以上の実験結果から, DL型およびL型α-AAAはいずれも一過性の網膜グリア毒性を示したが, 時にDL型の方がより選択性が高いように思われた. 他方L型はグリア毒性のみならず, 神経毒性をも招来した. 種々の網膜ニューロンの活動を電気生理学的に調べたところ, L型α-AAAによる神経毒性は外網膜層よりも内網膜層(神経節細胞の光応答の消失)側に強く認められた, 今後このDL型α-AAAを用いグリア細胞欠除標本を作製し, グリア・ニューロン相互作用やグリア細胞の機能的役割りを追求していきたい所存である.
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