研究概要 |
1)ライオトニンのDMSOによる分画 最近DMSOがタンパク分画剤として極めて有用であることを発見した. これを用いて, ライオトニン及び, ミオシン軽鎖キナーゼの分画を行い, 従来の成績を明確に確認できた. 即ち, 牛胃およびニワトリ筋胃の0.3M NaCl抽出液の0-40%分画(抽出液100mlにDMSO xml加えたものをx%と表わす)を再分画する. この30-50%分画のライオトニン作用(L)とキナーゼ作用(K)の比L/K(0.1M NaCl抽出液のL/Kを1としたとき)は30-100である. 1M NaCl存在下で再分画し, 110-150%成分をとるとL/K>3,000となり, キナーゼ作用がほとんど認められないライオトニンが得られたことを意味する. 2)ライオトニン活性ペプチドの分離 牛胃より常法によって得られる155Kd成分から蛋白分解酵素処理によりライオトニン活性をもたないキナーゼ活性ペプチドを得てきた. 今回はトリプシン処理後ゲルろ過によって分子量70KDaの, ライオトニン作用のみでキナーゼ作用を示さないペプチドの分離に成功した. 3)牛胃155kDa成分の一次構造の解析 155kDa成分のCNBr分解及びトリプシン分解により得たペプチドのアミノ酸配列を決定しこれに相当する合成DNAをプローブとしたcDNAの解析を行った. C端から約120kDd近くまでの配列が推定されている. 4)以上の事実と従来の結果とを併せ考えると, 軽鎖キナーゼ作用を介しない活性化機構が存在し, それを司る制御因子ライオトニンが存在することは益々明らかとなった. また軽鎖キナーゼは, 収縮過程に一義的な役割をもたないと考えるのが妥当である. 次の課題であるライオトニンの作用機構の解明は現在の処全く白紙である.
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