研究概要 |
海洋からは, 特異な生物活性を示すトキシンが多数得られている. このうち, イソギンチャクなどの腔腸動物に見出されたポリペプチドは, 低濃度で強心作用を示すこと, 共通の作用点としてNaチャネルが考えられている. 私たちは, 数年前より奄美大島産ハナガササンゴから強心作用を示すポリペプチド(Goniopora toxin)を分離し, アミノ酸組成を明らかにするとともに, 薬理作用を調べ, このtoxinがNaちゃねるに特異的に作用することを明らかにしてきた. 本研究の目的はこのtoxinのアミノ酸一次構造を決定し, Naチャンネルに対する作用を更に詳しく解析し, 他のtoxinとの類似点, 相違点を明らかにすること, cDNAクローニングを行い, toxinの遺伝子工学的大量生産を試みること, またイワスナギンチャクのtoxinであるPalytoxinについても電気生理学的解析を行うことである. その結果, 1)Goniopora toxin(GPT)は88個のアミノ酸からなる分子量9.700のポリペプチドで, そのアミノ酸一次配列と今までに報告されているイソギンチャク由来のポリペプチドとの間に相同性は認められなかった. 2)GPTはNaチャンネルに選択的に作用し, その不活性過程を抑制することにより持続的なNa電流, ひいては活動電位の延長を惹起した. 3)GPTのNaチャネル結合部位は, サソリ毒やイソギンチャク毒の結合部位とは異なっていた. 4)GPTのcDNAクローニングを試みたが, GPTと同じ塩基配列を持ったDNAは得られなかった. 5)GPTは既存のNaチャネルに選択的に作用したが, イワスナギンチャク毒であるPalytoxinは, 新しいチャンネルを形成することが明らかとなった.
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