研究概要 |
従来, ドーパはカテコラミンの前駆物質として位置づけられてきた. つまり, ドーパの薬理作用は, ドーパ脱炭酸酵素にり, ドパミンに変換された後に発現し, それ自体は不活性であると考えられてきた. ラット線条体切片潅流系において, 脱分極刺激がドーパを遊離する事実を見い出した. この遊離の性格を伝達物質ドパミンと比較するとともに, 外来投与のドーパの薬理作用を検討し以下の知見を得た. 1.二相性電場刺激(2Hz)及びKCl刺激(15mM)はドーパを, 前者はテトロドトキシン(TTX)感受性及びCa^<2+>依存性に, 後者はCa^<2+>依存性に遊離した. TTX感受性及びCa^<2+>依存性の程度はドパミンの場合と同様に完全であった. KCl(15及び60mM)は脱分極刺激によるチロシン水酸化酵素活性の亢進に先立って, ドーパ及びドパミンを遊離した. これらの結果はドーパが伝達物質様の興奮分泌連関により遊離される事を示す. 2.線条体切片において, 外来投与のドーパ0.03μMはドパミンの自発性遊離, 含量の増大を伴うことなく, 誘発性遊離のみを促進した. ドーパ0.01-1μMは, ドーパ脱炭素酵素阻害下に, ドパミン遊離を, 0.03μMにおいて促進性のシナプス前β受容体, 1μMにおいて抑制性のシナプス前ドパミン受容体を介し, 二相性に修飾した. なお, ラット視床下部切片においても, ドーパはノルエピネフィリン・ドパミンの誘発性遊離を, 線条体の場合とほぼ同様に, 二相性に修飾した. 以上のように, ドーパは, 特にラット線条体において, 伝達物質様の過程を介して遊離されること, ドーパ自体が一定の薬理学的応答を生じることを明らかにした. これらの結果はドーパが同部位において神経活性物質であるための必要条件である. 今後は, この作業仮設のもとに, さらに研究を進展させて行く予定である.
|