研究概要 |
我々は一連のヒトリンパ球膜抗原に対する単クローン抗体を作製した. L-29抗体によって認識される抗原はリンパろ胞の胚中心に存在する活性化B細胞に発現している. 一方L-30抗体によって認識される抗原はリンパろ胞のmantle zoneに存在する静止期B細胞に発現している. この静止期B細胞は細胞膜にIgDとIgMの発現がある. 又我々はインターロイキン2受容体に対する抗体(L10)も作製した. 正常人末梢血リンパ球を抗原や, マイトージェンで刺激すると, 正常B細胞は増殖を開始し, L-30抗原の発現は少くなり, B細胞が抗体産生細胞へと分化するにしたがい消失する. これに反してL-29抗原は, 正常B細胞では発現していないが, 活性化につれてつよく発現する. この様なB細胞にはL-10抗原も発現してくる. したがってL-29, L-30抗体はB細胞の活性化及び分化に伴って発現する抗原を認識している. これらの抗体は同時に悪性リンパ腫の診断にも応用できる. すなわち, diffuse small cleaved cell lymphomaではL-30とL-10抗原の発現がみられるが, L-29抗原の発現はない. これに反してLarge cell及びimmunoblastic lymphomaではL-29抗原の発現はあるが, L-30抗原の発現はない. Leukocyte-Common Antigen(LCA)は広く, リンパ球, マクロファージ, 顆粒球に分布する抗原として知られている. LCA抗原上に存在するユニークな抗原決定基に対する単クローン抗体を作製した. この抗体(Yz抗体)はJurkat cellや一部のATLの細胞と反応する. LCA抗原がその細胞のtransfomationに伴って変化し, Y1抗体で認識される抗原決定基を発現したものと思われ, 腫瘍特異的抗原としても使えることが明らかとなった. LCA抗原の遺伝子はB細胞にも存在するわけで, この抗原がいかにして特定の細胞にのみ発現するかを検討することは, リンパ球分化抗原のgene regulationを研究するうえで大変興味深いと思われる.
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