研究概要 |
1.黄色ブドウ球菌Wood46株及びV8株を10l単位で大量培養し, イオン交換樹脂と高速液体クロマト法によってブドウ球菌の毒素及びロイコシジンSとF成分を高度に精製した. 2.ブドウ球菌α毒素はウサギ赤血球膜あるいはウサギ多核白血球(好中球)膜に吸着すると直ちに膜内ホスホリパーゼA_2を活性化して膜リン脂質の切断によりアラキドレ酸やリゾレシシンが遊離してきた. 好中球の場合はさらに, アラキドン酸カスケード代謝系を亢進し, さらにホスファチジルイノシトール(PI)依存ホスホリパーゼC活性を正常の4倍増進させて, ホスファチジン酸合成も盛んになり, 添加された^<45>Caの細胞内取り込みが著しい増加をみせた. これらのα毒素の作用はその抗体を与えると直ちに中和された. このように, α毒素によって赤血球膜も好中球膜もリン脂質の撹乱が起こり, α毒素蛋白は膜内に侵入してリン脂質との複合体による膜の部分的孔を形成して細胞内容物の放出がはじまる過程を明かにした. 3.ブドウ球菌ロイコシジンSとF成分を一緒にヒト白血病HL-60細胞に加えると, 直ちに膜内ホスホリパーゼA_2活性を正常の4倍亢進し, これと同時にPI依存ホスホリパーゼCを活性化し, ジー及びトリーリン酸イノシトール合成を正常の3倍も亢進させ, HL-60細胞膜リン脂質の流動性を増した. 4.ロイコシジンによるHL-60細胞崩壊が1mMCaCl_2を添加すると直ちに阻止される新知見をえたので, その阻止機構を解析した. その結果, ロイコシジンはHL-60細胞膜のCa-カルモジュリン依存性プロティンキナーゼ活性を亢進させ膜機能蛋白質の分子量88000(88Kd)を強くリン酸化させることを見出した. この88Kdは膜Ca^<2+>イオン依存性K^+イオンチャンネルを制御している蛋白質と推測できる知見をえているので, 現在, 詳細な検討を行ている.
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