研究概要 |
本研究はB細胞を増殖分化せしめるリンホカインT cell replacing facter(TRF)のTh細胞からの産生調節機構, TRFとTRFレセプターの相互作用, TRFのシグナル伝達系を調べ, 各種免疫不全, 免疫疾患の異常を検索することを研究目的としている. 2年間の研究成果は以下のようにまとめることができる. 1.マウス活性化B細胞に増殖分化を誘導するTRFのみを産生するB-151K12細胞の培養上清より, TRFを精製しラットを免疫した. ラット脾細胞とマウス骨髄腫細胞を細胞融合させ, TRF活性のみを中和し, 且つTRFを結合し得る単クローン抗体産生株(TB13)を得た. TB13はB151-TRFの示す全ての生物活性を中和した. TB13と結合したB151-TRFの分子量は約46,000で還元により23,000に減少した. 2.TRFをコードする相補性DNAのクローニングをマウス株化T細胞より行った. TRFcDNAは約133個のアミノ酸をコードでき, N末端側20個のアミノ酸残基は疎水性に富んでいた. そのアミノ酸組成はこれ迄報告のある他の蛋白質とは異なるものであった. 3.組み換えDNA由来のTRFは(1)B細胞に増殖分化を誘導するのみならず, IL-2受容体の発現を高めIL-2と相乗的にB細胞の増殖分化を促進させる, (2)抗原感作胸腺細胞に作用し, IL-2受容体の発現を促進させIL-2共存下に細胞障害性T細胞の生成を高める, (3)骨髄幹細胞に作用し, 好酸球の増殖分化を促進させることを明らかにした. TRFの多彩な作用に鑑み, 我々はTRFを新しいインターロイキンと定義し, インターロイキン5(IL-5)と呼ぶことを提唱した. 今後は組み換えDNA由来のIL-5を用いてIL-5受容体を検索すること, IL-5産生の調節機構を検索することが, B細胞の関与する免疫異常の解析に極めて重要であると考えられる.
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