研究概要 |
1.環境衛生学的な観点から, 複合影響を評価する系として, 機能する腎尿細管細胞を用いた実験系を確立した. すなわち, 家兎の腎臓をコラゲナーゼを含む緩衝液で潅流し, 腎皮質の尿細管細胞を分離し, 家兎腎尿細管細胞浮遊液を調整し, 得られた細胞が満足いく生理的機能を有するかどうかを検討した. その結果, ナイスタチン添加による最大細胞呼吸率32.0±1.5μmolO_2・miD1n^<-1>・mg protein^<-1>,ADPおよびジギトニン添加による最大ミトコンドリア呼吸率35.6±1.6μmolO_2min^<-1>・mg protein^<-1>,FCCP添加呼吸鎖最大酸素消費率113.8±4.6μmolO^2min^<-1>・mg proteina^<-1>,細胞内カルシウム300±7μmol・mg protein^<-1>,細胞内カリウム16.6±0.5μmol・mg protein^<-1>,等の値を得, また組織学的な検討も行い, 今後の実験に供するに充分な系であると結論した. 2.同様の観点から, さらに, ラットの潅流腎臓を用いた実験系を確立した. 定常状態における潅流圧80-100mg,潅流量10-12ml/g/min,GFR0.4-0.6ml/g/mD1in,尿量0.1-0.2ml/g/min,Na_+再吸収率94-98%,酸素消費量6-7mol/g/min,ピリジンヌクレオチド,Cyt.C,Cyt.aa_3の%還元率40-50%,19-23%,13-17%であった. さらに分光分析の手法と^<31>P-NMRの手法を併用し, エネルギー代謝動態を把握した. 3.低酸素状態におけるCa蓄積は, Cty.aa_3の10-40%の酸化率を示す状態において認められ, ano-xiaでは認められないこと, LDHを指標とした細胞障害は, 細胞内Ca^<++>の上昇と関連することを示した. 4.環境汚染物質, 特に有機溶剤において, 低濃度では酸素消費量の増加をもたらし, 中等度から高濃度においては酸素消費量の低下をもたらすこと, また, 細胞内Ca量を減少させる傾向のあることを明らかにした. 5.本実験系における諸指標の変化に基づいて低酸素状態並びにCaの細胞内蓄積・喪失・細胞内Ca^<++>の上昇及び低素細胞障害の関連に ついて明らかにした
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