研究概要 |
血中免疫複合体(CIC)は膠原病を初めとする自己免疫疾患における臓器病変の重要な病因の1つと考えられているが, 測定法により一定の結果の得られない事も多く, 病像との明確な相関についても未だ解明されていない. 我々はマウスモノクローナル抗C3dg抗体およびモノクローナル抗ヒト1gGFc抗体を用いたCIC測定法を確立し, 膠原病におけるCICの病因意義に関する研究を行なった. 本法は特異性にすぐれ, リウマトイド因子などの影響もうけにくい測定感度の鋭敏な測定法である. 膠原病各疾患におけるCIC濃度を本法(AC3dg)およびC1q固相法(C1qS)につき示す. 全身性エリテマトーデス(SLE)では, AC3dg5.5±5.7μg/ml, C1qS3.7±4.0μg/ml, 慢性関節リウマチ(RA)では, AC3dg5.6±4.5μg/ml, C1qS2.4±2.0μg/ml, 混合性結合織病(MCTD)では, AC3dg6.0±3.7μg/ml, C1qS2.3±3.4μg/ml, 全身性進行性硬化症(PSS)では, AC3dg4.3±1.3μg/ml, C1qS2.8±1.9μg/ml, 結節性動脈周囲炎(PN)では, AC3dg3.9±2.7μg/ml, C1qS1.9±0.1μg/ml, ベーチエット病では, AC3dg5.0±2.3μg/ml, C1qS2.4±1.7μg/mlであった. RAにおける二重濾過法による血漿交換療法前後の比較では, AC3dgにおいて, 6.0±3.6μg/mlから4.1±2.4μg/mlと33%の減少率を示し, 2ケ月後まで臨床症状の改善と共に低値を示した. SLEにおいては低補体価群においてAC3dg7.6±11.8μg/mlと正常群(5.5±5.8μg/ml)より高値を示した. しかし尿蛋白陽性群では単に, AC3dg4.1±12.9μg/mlと, 陰性群の5.8±6.1μg/mlより低値を示していた. 本法では, PCNA(proliterating cell nuclear antigen)やKi等の抗原と対応する抗血清により作成された抗原特異的免疫複合体の測定の可能な事も示されており, 今後自己免疫疾患の病因の検索及び, 治療上の指標として, 重要な方法であると考えられる.
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