研究概要 |
リボースは生体の重要な構成成分であるにも拘わらず, 代謝, 動態が極めて緩慢である為, その代謝経路や存在意義を研究することが困難であった. 今回我々は, 赤芽球方向へ分化を誘導したK-562細胞で, 通常の各種細胞に比べて数倍から数百倍以上の活発なリボースのとり込みがあることを見い出した. とり込まれたリボースの代謝系路に関しては, 今回は測定系が未完成なこともあり判明しなかった. しかし本細胞でのリボースのとり込みの亢進は細胞増殖の抑制を平行して伴い, 可逆的なものであることや, 形態変化のないこと, 非分化K-562細胞には認められない特異的な現象である点等より, 何らかの生理的な意義をもった現象であると思われた. 更にリボースの増殖抑制作用は, HMPシャント経路への何らかの干渉による強力なDNA合成抑制の結果であることが強く示唆され, 細胞内核酸系代謝物の変動も認められることより, リボースがエネルギー代謝系と核酸代謝系の間で重要な調節因子となっている可能性が示された. 一方リボースは消化管よりの吸収が悪いことのみならず, 腎での再吸収もあまりないことが示された. このことはリボースがヒト尿中には微量ではあるが存在しているのに対して, 血中にはほとんど検出されないこととよく一致する. 我々はリボースのとり込みや異化が限られた臓器のみに集中し, しかもあまり活発でないことを確認しており, プリン代謝異常症の優れたマーカーとなる可能性を見い出した. 既にリボース代謝異常は一部の難病において報告されている. しかしリボースの体液中の濃度は極めて微量な為, 鋭敏かつ信頼度の高い測定法が要求される. 今回の経験によりまだ試験的ながら, いくつかの有力な測定法のめどもついた. 更にK-562細胞を用いてのリボース特異的酵素であるリボカイネースの大量抽出も, 遺伝子工学的手法を用いて検討中である.
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