研究概要 |
胃癌の光化学療法(PDT)の作用機序について, 電子スピン共鳴(ESR)の信号強度測定により解明を試みた. まず, ESR信号測定法の確立のための方法論の確立を行った. 実験胃癌の作成は, 種々の方法を試みたが, 実験モデルとしては不十分であり, MBT-2腫瘍をC3H/Heマウスに皮下移植し, 実験腫瘍とした. 一方, 腫瘍親和性光感受性物質のヘマトポルフィリン誘導体(HpD)も入手困難となり, 同じ作用を持つポルフィリンポリマー(N-HpD)を使用した. レーザーは, アルゴンレーザーとアルゴン色素レーザーの2種を用いた. 胆腫瘍マウスへN-HpDを腹腔内投与し, 経時的な群にレーザーを照射し, ESR信号強度を測定し, コントロールおよび各群の対比を行った. 2種のレーザー照射のいずれも, 照射後12時間の群において, 高いESR信号強度を示し, ついで24時間群であった. 36時間群, 48時間群では, コントロール群と同程度の信号強度であった. 従って, この腫瘍の, この条件下では, 12時間後の群で, N-HpDのレーザー照射による化学反応がもっとも強く, その結果としてのラジカルの発生をESR信号強度として実証できたと考える. この方法により, さらに詳細な時間的経過群測定, およびN-HpD投与量, レーザー照射条件の検討は, PDTの臨床応用へのより至適条件の設定を可能とする. 今回は, N-HpDの安全性の問題から臨床への応用ができなかった. 一方, 臨床応用を前提とした実験動物の内視鏡検査および生検についての検討では, 現在, 最小径の径4mmのペットスコープでは, ラットの胃内観察はきわめて困難であった. このため径2mmの硬性の針状鏡を試作したところ, ラット胃内の大部分を観察できた. 今後の改良により, 実験胃癌の作成, 内視鏡観察, ESR信号測定の検討が円滑に進み, PDTの臨床の効果測定, 至適条件の設定が容易になるとともに, 作用機序の追求が可能となる.
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