研究概要 |
急性肝性脳症(DMN急性肝不全犬)と慢性肝性脳症(エック瘻犬)について脳のcholecystokinin-s like immunoreactivity(CCK-8IR)を測定し, アンモニアおよびアミノ酸との関連を検討し, 次の結果を得た. 1.DMN急性肝不全犬とエック瘻犬は, 症状, 血液アンモニアの増加, 血漿遊離アミノ酸レベル(Tyr,Pheの芳香族アミノ酸の増加)から, 脳症のモデルとして適切であった. 2.健常犬の大脳皮質には192-345pmol/g wet weightに及ぶ大量のCCK-8IRが認められ, 前頭葉が最も高値であった. 視床では前頭葉の約1/3, 中脳では約1/9の低値であった. 3.急性肝不全犬およびエック瘻犬において脳のCCK-8IRは減少した. すなわち, 急性肝不全犬では側頭葉と頭頂葉で健常犬のそれぞれ65%と47%に, エック瘻犬では大脳皮質全体で健常犬の62〜39%に有意に減少した. また急性肝不全犬は視床で, エック瘻犬では視床と中脳で健常犬に比し有意の減少を示した. 4.CCKの大脳皮質内分布を蛍光抗体間接法を用いて検討したが, エック瘻犬では健常犬に比しCCK陽性細胞は著しく減少していた. 5.血液と髄液のCCK-8IRは急性肝不全犬, エック瘻犬とも健常犬と差がなかった. 6.急性肝不全犬とエック瘻犬では, 脳のTyrとPheは健常犬お約2〜3倍に増加した. ことにエック瘻犬で著しく, Pheで著しかった. 7.エック瘻犬では大脳皮質CCK-8IRと血液および髄液のアンモニアとは有意の負の相関を示した. 8.急性肝不全犬およびエック瘻犬ともに大脳皮質CCK-8IRと髄液および脳内の芳香族アミノ酸(Tyr, Phe)との相関は認められなかった. 9.脳症での大脳皮質CCK-8IRの著明な減少は偽性神経伝達物質と関連のあるTyr, Pheとは無関係に生ずるものと考えられる.
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