研究概要 |
本研究は, 甲状腺ホルモンの異常呼吸への影響を末梢効果および分泌調節機構の面から検討するため, 甲状腺ホルモン負荷動物実験と甲状腺機能失調呼吸調節臨床実験が計画され実行された. 初年度成績では卵白アルブミン感作モルモット摘出気管鎖の卵白アルブミンに対する収縮がT_47日間負荷の甲状腺機能状態で明らかに亢進し, 甲状腺ホルモンが異常呼吸と関連することをまず明らかとした. 次に, 健常者, 非喘息肺疾患, 喘息群の呼吸機能の日内変動をしらべ, 一秒量, FRC, RVに有意の24時間余弦曲線日内リズムを見出し, 気管支喘息のT_3日内リズムと一秒量のリズムとがほぼ一致することを明らかとした. すなわち, 異常呼吸をくりかえす気管支喘息と甲状腺ホルモンとの関係は明らかである. 次年度では, 動物実験を発展させ,甲状腺ホルモンがアセチルコリン, ヒスタミンに対する気管収縮を抑制することを明らかにし, 気管収縮増強は感作時に起る特殊なものであることを示した. 気管支喘息の多くはアレルギーの要素を持ち, 副腎機能とも関係する. 副腎皮質ホルモンは, TRHに対するTSH分泌抑制, T_4よりrT_3への変換亢進と甲状腺分泌, 効果発現を抑制する機序を持つ. したがって, 第一に気管支喘息にメサコリンを吸入させ, 異常呼吸を起させた時の四清free cortisolを検討し, 一部に低反応性のものがあり, free cortisolは増加せず, しかも, これら低反応群は発作がより重症化する傾向がみられた. したがって, ここでも, 甲状腺ホルモンの気道収縮への役割を否定できない. 一方, 気管支喘息の治療としてテオフィリニが用いられるが, アミノフィリン静注によりTSH, T_4共上昇する. しかし, 連続経口投与ではテオフィリン濃度はγT_3と比例し, 本剤の甲状腺ホルモン分泌亢進を末梢組織レベルで緩和する反応が起っていることが示唆された. 結論として, 気管支喘息にみられる異常呼吸が甲状腺ホルモンが増強すると考えられた.
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