研究概要 |
肺気腫はproteinase-antiproteinase imbalanceの結果で生じるとする説が有力であり, 肺組織破壊を惹起するproteinaseには好中球エラスターゼの重要性が指摘されている. 一方, 肺局所のantiproteinaseは肺組織破壊を防禦する役目を果しており, この肺局所でのantiproteinaseの障害は肺気腫発生の原因となる. 本研究では, ヒト気管支洗滌液の検討と好中球によるα_1AT機能障害を検討した. 1.慢性気道感染患者のBALFエラスターゼ活性の検討. 本研究は気腫化を特徴とするCOPD患者のBALFを用いて, 肺局所のエラスターゼ活性を検討した. 慢性気道感染患者の肺局所には強いエラスターゼ活性が存在し, そのoriginは好中球であることが示された. 2.喫煙者の肺局所α_1ATの検討. 喫煙は肺気腫発症の重要な因子であり, 喫煙が肺局所α_1ATの機能を障害することが注目されているので, 喫煙者BALFを検討した. 喫煙者BALFのEICは低下しており, 喫煙による肺局所のα_1AT機能障害が示唆された. 3.好中球によるα_1AT機能障害. これまで肺局所α_1ATの機能障害に好中球や肺胞貧食細胞の関与が報告されているので, in vitroの系で好中球によるα_1ATの機能障害(EIC低下とTIC不変)を実証し, その機序に, 好中球産生の活性酸素によるα_1ATのoxidationの関与を示唆した. なお, このoxidationにはPMO-H_2O_2-ハロゲン系の関与が示された. 本研究では, ヒト肺気腫発生にはproteinaseとして好中球エラスターゼが重要であり, 感染や喫煙は肺局所α_1ATの機能障害を惹起し, 肺気腫発生に深くかかわっている可能性が示された. 本研究成績は胸部疾患学会また, 気管支学会にて発表した. なお, 肺胞貧食細胞によるα_1AT機能障害は現在検討中である.
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