研究概要 |
神経ペプチドは, 神経系においてその作用を発現するのに比較的長時間を要することが多く, 神経伝達物質であるとともに神経調節物質として重要な役割を演じていることが予想されている. これまでにも多くの神経ペプチドが見出されているが, そのほとんどは腸管や血管など末梢組織に帯する作用を指標として発見されたものである. 神経系にもっぱら作用をもつ神経ペプチドを発見するには, 神経系の標本を用いてスクリーニングするべきであるとの考えから, 我々は本研究では, 新生ラット脊髄のin vitro標本を用いた. まず, 生理学的実験により, この標本によって(1)前根電位の脱分極, (2)後根電位の脱分極, (3)後根刺激による前根での単シナプス反射, (4)上部脊髄側索の刺激による下部脊髄前根での下行性反応, の4つが指標になることを確認した. 次に, この標本により既知の神経伝達物質の作用がそれぞれ分離でき, 未知の物質のスクリーニングに役立ちうるか否かを検討した. その結果, GABA, glutamateなどのアミノ酸, noradrenaline serotoninなどのモノアミンの他substanceP, CGRPなどの神経ペプチドは, 効果を出す濃度も, その作用パタンも異なることが判明し, スクリーニングとして有効であることがわかった. そこで, ブタ脊髄50kgからアセトン・塩酸にて粗ペプチドを抽出し, これをまず逆相系HPLCにて分画した. 各チューブからのaliquotを脊髄標本に適用したところ, 既知の神経ペプチドのピークの他に, 腸管など末梢組織には作用がないのに脊髄標本には強い作用を示すピーク, あるいは腸管にも作用はあるが脊髄標本には既知のペプチドとは異なる作用を示すピークなど, 興味あるピークを数個見出すことができた. そのうちの1つのピークをイオン交換HPLCとさらに逆相系HPLCで純化しアミノ酸分析を行ったところsubstance P fragment(6-11)であった. 他のピークについては現在検索を続けているところである.
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