研究概要 |
クロイツフェルト・ヤコブ病(以下本病と略す)の特異蛋白プリオン抽出法によりアミロイド繊維が, 本病以外の全身性アミロイドーシスやアルツハイマー病のアミロイド沈着臓器より抽出可能であることを見出した. しかしながら, 本病のアミロイドは, 他のアミロイドとは異なる繊維蛋白より構成され, 免疫学的に, 特異抗体を用いた組織染色では, 本病のアミロイド斑とのみ反応し, 他のアミロイド沈着とは交叉反応をしないこと確認し報告した. また, 本病のアミロイド斑を組織切片中にて変性させる物理的および化学的処理が, 本病の感染力価を低下および消失させることを証明した. また各種の特異抗体を作製した. 抗マウスプリオン抗体, 抗ヒトプリオン抗体, 抗プリオン合成ペプチド抗体を作製し, 免疫反応を高めるため新たに開発したギ酸処理法を併用すると, 本病のヒトおよびマウス脳より, ごく小さなクル斑まで検出可能となった. またクル斑と同様のアミロイド沈着をもつ老人斑が, そのアミロイド蛋白自体が, 免疫学的にも生化学的にも異なるものであることを報告した. さらに, 本病感染マウス脳を用いて, 免疫組織学的に検索すると, このクル斑のアミロイド蛋白が, ヒトプリオン蛋白より構成されるのではなく, マウス自身のプリオン蛋白由来であることを, Western blot法ならびに, 免疫染色にて証明した. Western blot法では脳の場合, 現在, 湿重量5mgの脳組織があれば, 簡単に本病を診断することが可能となっている. また, 本病感染マウスの各種臓器を用いて, プリオン蛋白が検出可能か否かを検討した. 今のところ, 本病感染マウスの脾臓よりプリオン蛋白が抽出できている. しかし, その検出には,マウスの脾組織25mg〜50mgが必要であり, さらに検出感度をあげるため, ラジオイムノアッセイ法の開発を現在行っているところである.
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