研究分担者 |
尾崎 仁 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
松山 泰三 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
佐藤 秀幸 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (70167435)
井上 通敏 大阪大学, 医学部附属病院, 教授 (30028401)
OZAKI Hitoshi Osaka University Hospital
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研究概要 |
運動時には酸素消費量の増加に対応するため活動筋への血流が著しく増加する. この循環調節には交感神経活動による心臓の陽性変力, 変時作用と非活動筋部における血管収縮作用が主役を演じているが, 運動時の交感神経活性が運動量に応じて至適レベルに維持調節される機序については明らかでない. そこで本研究では運動時の交感神経が需要に見合う血流を活動筋へ供給するために働くには活動筋の代謝レベルに応じて求心路が興奮し遠心路が活性化される反射弓が存在するという仮説のもとに, 臨床例を対象として活動筋の生化学的変化と交感神経活性の関係を求め, 遠心路活性が活動筋内の生化学的変化により調節されているか否かを検討した. さらに心不全患者においてこの運動反射がどのように変化しているかについて明らかにするとともに交感神経遠心路活性に対する不全心の反応性についても検討した. その結果, 1)運動時の混合静脈血酸素分圧と血中ノルエピネフリン濃度の間には極めて密な負相関が認められること, 2)この関係は健康成人, 心不全患者の区別なく一定であること(y=14.66-2.62χ, γ=0.838), 3)選択的β1遮断剤(metoprolol)により人為的に活動筋の血流を減少させた場合においてもこの関係は投与前後で変化を認めないことを明らかにし, 運動時の交感神経活性が心不全の有無に関わらず活動筋部酸素需要バランスにより調節されている可能性を示した. さらに心不全患者では健康成人に比し運動時の交感神経刺激に対する変時反応性および変力反応性が重症度に応じて低下していることを明らかにした. 本研究の結果は心不全患者の運動予備能の低下は不全心筋自身の交感神経刺激に対する反応性の低下によるものであり, 運動反射により交感神経性循環調節は正常に保たれていることを示しており, 移植心あるいは人工心臓の制御システムの開発などに大きく貢献するものと考えられる.
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