研究概要 |
実験的急性コクサッキーB3ウイルス性心筋炎マウスモデルにおいて, 無麻酔下14日間連続心電図記録による不整脈の解析と, 心臓とくに刺激伝導系特殊心筋の光顕・電顕的検索を行い, 両者の関係を詳細に検討, 以下の結論を得た. 1.心筋炎マウスに多彩な不整脈がみられ, その内訳は, 洞停止80%,2度または3度房室ブロック30%,上室性期外収縮30%,心室性期外収縮20%,心室頻拍10%,であった. 2.一般に不整脈の多くは一過性であったが, これは組織病変がより顕著な固体で病変が高度な時期(6-13日)に一致してみられた. なお洞停止は洞結節の病変が明かでない心筋炎早期から出現した. 3.心筋病変の部位と不整脈の種類との間に関連が認められた. すなわち, 心室性期外収縮, 心室頻拍をきたした固体では心室筋病変が高度で, 上室性期外収縮例では心房病変が強かった. 房室ブロック例では房室伝導系に, 洞停止例では洞結節に病変が認められた. 4.房室伝導系の電顕的検索により, (1)特殊心筋細胞の変性, 壊死, (2)間質細胞の浸潤, (3)神経終末の変性, (4)間質の浮腫, 出血, (5)リンパ管の拡張などがみられ房室伝導障害への関与が示唆された. 実験的ウイルス性心筋炎における無麻酔下連続心電図記録による不整脈の解析とそれら不整脈の病理組織学的背景に関する検討は今まで報告されていない. また, 心筋炎の刺激伝導系の病理学は, ヒトと動物モデルを問わず, 従来, 光顕的検索にとどまり, 特殊心筋の微細構造病変と機能障害との関連については知られていない. 今回, 電顕的観察により房室伝導系における種々の微細構造病変が明かとなり新たな知見と考えられる. 以上の結果の一部は第11回国際電顕学会, 第6および7回国際心臓研究学会日本部会, 第10回心筋代謝研究会, 第51回および52回日本循環器学会学術集会, 昭和61,62および63年度厚生省特定疾患特発性心筋症調査研究班総会, 第2回特発性心筋症, 心筋炎国際シンポジウムに於て報告した.
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