研究概要 |
原発性無(低)ガンマグロブリン血症患者13名のB細胞についてその分化活性化の機構を解析した. すなわちEBVで樹立したLCLでの検討と, 末梢血B細胞が5%以上の例ではSAC, rIL-2によるDNA合成, Ig産生の検討を試み, その両者の結果を総合してB細胞レベルでの異常を解析した. さらにpreB細胞〜B細胞レベルの欠陥が示唆された例では遺伝子レベルでの検討を施行した. (1)末梢血B細胞数は13例中6例で1%以下であった. (2)B細胞数が2%以上であった7例では全例LCLが樹立され, LCLの産生するIgは1例を除きIgM優位の産生であり, 臍帯血由来LCLと同じ未熟性を測定した. B細胞数の少ない例では骨髄からLCLの樹立を試み, 6例中3例でLCLが樹立された. 1例ではIgM主体の産生, 1例ではIgG優位の産生で, 1例ではIg産生を認めないpreB細胞株であり, B細胞数の少ない症例での病態における多様性が示唆された. (3)B細胞が5%以上の症例ではB細胞を分離してSAC, rIL-2を用いて機能解析した結果, LCLがIgM主体の産性であった症例では, SACでのDNA合成に欠陥を有するもの, SACで活性化されるがrIL-2に対する反応を欠くもの, SAC+r-IL2によるDNA合成能を有するがIg産生への分化が出来ないもののそれぞれが存在ることが明らかになった. またLCLが正常コントロールと同じIg産生パターンの例では, SAC+rIL-2でIg産生を認めた. (4)LCLがpreB細胞と考えられた症例の遺伝子レベルの検索の結果, μ鎖mRNAは膜型, 分泌型のいずれのμ鎖mRNAに比して短く, 遺伝子レベルでの異常が示唆された.
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