研究概要 |
1.イオン系および非イオン系造影剤の物理化学的諸性質と赤血球膜変形イオン系造影剤は, 浸透圧が高い程, 濃度が高い程, 赤血球膜の変形が強くなり, 赤血球膜は外方突出を示した. イオン系造影剤でも低浸透圧のイオザグレイトは赤血球膜変形は軽度であった. 非イオン系造影剤はイオン系に比して浸透圧が低いが, メトリザマイドは強い変形を示し, 他の造影剤の変形の程度は弱く, 赤血球膜変形と油水分配係数と相関した. 2.各種疾患における赤血球への影響 骨髄腫では赤血球の連銭形成が高浸透圧イオン系造影剤および非イオン系のメトリザマイドで促進され, 連銭塊が巨大化したが, 連銭形成の促進は免疫グロブリンの量と相関し, ベンス・ジョンズ型骨髄腫では連銭形成の促進は認められなかった. 糖尿病, ネフローゼ症候群では, それぞれ血糖が高い程, また血清アルブミンが低い程, 強い外方突出を示したが, 赤血球膜脂質異常の低ベータコレステロール血症では極めて強い外方突出を示した. 3.造影剤によるショック患者の赤血球膜変形とステロイドの治療効果. 造影剤によるショック患者では, ショックを起した特定の造影剤に対してだけでなく, 全ての造影剤に対して強い赤血球膜の変形を示した. 水溶性ステロイドは, イオン系造影剤による赤血球変形の抑制効果を示したが, 非イオン系造影剤に対して抑制効果はなかった. しかも造影剤投与30分前の抑制効果は著しかったが, 造影剤投与後では抑制効果が弱く, 造影剤の副作用防止はステロイドの剤の前投薬の方が, ショック発生後の投与より効果がある事を裏付けしている. 4.従来, イオン系造影剤投与が禁忌, 又は要注意と言われている糖尿病, 腎不全, 骨髄腫や, ショック患者において, 造影剤による赤血球膜変形が強く, それは副作用予知の可能性を示す.
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