研究概要 |
すでに報告してきたとおり染色体分析法については, ethidium bromideを用いる高精度分染法を確立し, MDSにおける染色体異常と予後との密接な相関を明らかにした. 骨髄異形成症候群(MDS)においては, 約2/3の症例で染色体異常がみられること, また, No〓5, 7染色体に異常を有する症例は予後不良の一群を形成するなどを明らかにした. 一方, ポリレリジン処理スライドを用いた単一造血幹細胞コロニーの染色体分析法を確立し, 慢性骨髄性白血病(CML), MDSならびに急性非リンパ性白血病(ANLL)における各種前駆細胞由来のコロニーの染色体分析を行った. CMLでは直接法より早期に急転クローンを顆粒球コロニーでとらえて報告した. ANLLではHPCM, PHA-LCMの刺激により15:17転座をもつM_3, 8:21転座をもつM_2例では染色体異常を持つ異常幹細胞がclone性の増殖をしていることを確認した. しかし, inv(16)では, 形成されたコロニーの核型は正常なものばかりであった. このことから, 特定の染色体異常を持つ患者では, 白血病幹細胞のコロニー形成能が一定のパターンをとる可能性が示唆された. MDSにおける幹細胞培養では, 顆粒球, 赤芽球系いずれも形成不良であり, 一定の傾向を認めなかった. 顆粒球コロニーでは, 骨髄直接法で異常を認めた症例でも細胞遺伝学的に異常クローンの優位になるもの, 正常と異常が混在しているもの, 正常が優位になるものを認め, 症例にる差異を確かめた. 不応性貧血の2例では, 顆粒球のみならず, 赤芽球コロニーでも異常核型を認め, 顆粒球, 赤芽球の両者に分化し得る段階で異常クローンの生じていることが証明された. 一方, 我々は, フリラジカル反応がMDSの造血障害のメカニズムの1つではないかと考え検討を進めた. その結果, 赤芽球内還元酵素および血漿内還元物質の消費の亢進を認め, 酸化による障害が亢進していることを確認した.
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