研究概要 |
シクロスポリン(CsA)は, サプレッサーT細胞を障害することなく, ヘルパーT細胞の機能を障害すことにより, 免疫抑制作用を発揮する. 一方, ドナー抗原はサプレッサー, ヘルパーT細胞を活性化させる. 従ってCAとドナー抗原を同時に投与すると, CsAによってヘルパーT細胞を活性化させる. 従ってCsAとドナー抗原を同時に投与すると, CsAによってヘルパーT細胞の機能が低下し, 相対的にサプレッサーT細胞の機能が高まって, unresponsivenessが獲得されると考えられる. そこで輸血あるいは3モルKCl抽出ドナー抗原をもちい, 10mg/kg/日, 3日間のCsA投与と併用することによって, 生着延長を認めるか否かを確かめ, このメカニズムを解析した. 近交系Buffalo・ラット(BUF)とWistar-Furthラット(WF)間の腎移植で, 移植前に3モルKClで抽出したドナー抗原あるいは輸血を投与し, CsAを3日間投与した結果, 生着期間はドナー特異的に延長した. また移植後10日目のレシピエントのリンパ球は, MLRおよび膝下リンパ節を用いた局所GVHRをドナー特異的に抑制し, このリンパ球を無処置でBUF腎を移植したWFにadoptive transferした結果, 短期間ではあるが有意な生着期間の延長を認めた. さらにCsAとドナー抗原を併用投与したレシピエントにcyclophosphamideを投与した結果, 有意な生着期間の短縮が認められた. このように短期間のCsA投与でも, ドナー抗原を併用投与すると, レシピエントにおけるサプレッサー活性が高まり, CsAによるヘルパー活性の抑制との協同作用によって, 生着期間が延長すると考えられた. そこで生着期間をさらに延長させるため, 3回のCsAとドナー抗原あるいは輸血の周期的反復投与を行った. この結果, ドナー抗原では65日以上と著明な延長が認められたが, 輸血の反復投与は無効であった. これらの結果より, CsAとドナー抗原, あるいは輸血の投与は, 有効な免疫抑制療法となり得ることが判明した.
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