研究分担者 |
諸井 将明 自治医科大学, 医学部, 助教授 (00049074)
照喜名 重治 自治医科大学, 医学部, 講師 (80146159)
坂田 洋一 自治医科大学, 医学部, 講師 (40129028)
吉田 信彦 自治医科大学, 医学部, 講師 (10049083)
村山 英樹 自治医科大学, 医学部, 講師 (70146166)
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研究概要 |
2年間に亘る本研究に於いて, 外科的血栓症および関連疾患患者で見出された血液凝固線溶関連物質の先天性欠損症と分子異常症の分析を中心として, 血栓形成とその制御機構について考察した. すなわちアンチトロンビンIII(ATIII)の欠損症6家系15例, 同分子異常症1例, プロテインC(PC)欠損症3家系, 同分子異常症1例, フィブリノゲン(Fbg), 分子異常症14家系である. これらの中, 酵素中和能とヘパリン結合能を欠くATIII分子異常症では立体構造障害が見出され, このため凝固因子を中和し得ないだけでなく, 血管内皮細胞表面のヘパリンには結合し得ず, 血栓を惹起したものと判断した. PC異常分子では, PC分子および遺伝子の解析から,活性化に際して開裂される部位のアミノ酸にArg-Trpの遺伝性置換をつきとめた. 本症例はPC分子異常としてだけでなく, 機能障害に関連して構造異常が同定された世界初の症例である. これら, 血栓制御因子の欠損あるいは分子異常家系では深部静脈血栓, 肺血栓塞栓などが多発していることから, 広範囲に亘る探索が必要と思われる. Fbg分子異常は臨床的に血栓出血に直ちに結びつくとは限らないが, 血栓形成機序解明に必須の情報を提供してくれた. 本研究により, 合計14例でアミノ酸異常を同定した. すなわち, AαArg16→His2例, 同→Cys2例, AαPro18→Leu^*1例, γArg275→Cys^*4例, 同→His2例, γAsn308→Lvs^*1例, γMet310→Thr^*1例, γAsp330→Tyr^*1例である(*はこれまでに報告されていない型). 因みに本邦でアミノ酸置換が同定されるものは他に1例あるにすぎない. 又, 本研究により作成した種々のモノクロナル抗体は上記分析や培養細胞反応系での凝固・線溶因子の産生と分泌あるいはその活性化やインヒビタによる中和等の解析に利用し, 威力を発揮した. その成果の詳細は紙面の都合で割愛するが, 逐次内外の学会, 雑誌等に報告してきている(発表論文参照).
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