研究概要 |
四肢の動脈塞栓あるいは動脈硬化性閉塞, 狭窄による循環不全症は増えつつある疾患である. このような動脈不全症を起こした患者の診療では, 下肢の血行状態を客観的に把握して治療法を選択し, その結果を評価する必要がある. 幸い最近では電子式計測機器が発達したため, 無侵襲的に下肢の末梢循環に影響している血圧, 血流量, 血管抵抗, 血管弾性などのパラメータを測定できるようになった. 本研究では下肢の血行動態をシミュレーションするコンピュータ・プログラムを作成し, その結果と臨床所見とを対比させながら, 下肢動脈不全症の病態理解を試み, 同時に手術適応の有無, 各種治療法の客観的評価に役立てることを目的とした. 1.研究経過 a)シミュレーションモデルの構築とプログラムの開発: 下肢コンパートメントの動脈循環で血圧と電圧, 血管抵抗と電気抵抗, 血流量と電流などを対応させたモデルを構築し, この電気的等価回路でシミュレーションするプログラムを開発した. b)臨床的循環パラメータの記録: 超音波ドップラー流速計, 超音波定量的血流測定装置, 独自に開発した圧トランスジューサなどを用いて, 正常人をも含めた被検者の四肢各部位における血圧, 血流量などを同時測定してそれらをまずデータレコーダに記録した. c)シミュレーション手法: 生体からのデータをもとに, Runge Kutta法を用いて回路方程式を解き, ROI(region of interest)の血圧, 血流波形を描出する. 2.臨床的impllcationとこれからの展開 血圧波形を例にとると, 動脈硬化などで狭窄が少しずつ進展していく過程で, 末梢の血圧波形がどのように変化するかは知ることができる. このように下肢循環障害の進展予測や, 手術後, 投薬後の治療効果判定にも応用できる.
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