研究概要 |
過去十余年の動物腫瘍およびヒト腫瘍細胞株による研究により, 腫瘍がその制癌剤感受性, DNA測定値, 免疫原性などから見て不均一な細胞群の集合体であることが次第に明らかにされてきた. 研究代表者谷川らは, ヒト新鮮腫瘍においても同様であることを証明してきたが, 本研究において転移巣を構成する腫瘍細胞群に原発巣のそれと異なる性格を見出せるか, 或いは同一患者の異所性転移巣の間に類似性があるかといった点を制癌剤感受性および腫瘍細胞DNA量, DNA Ploidy Pattern から検討してきた. 本研究に用いたIn Vitro制癌剤感受性試験法シンチレーション法は, 谷川らが独目に開発した方法であり, 他のAssay法と比較してもより高い判定可能率と臨床反応との相関性から内外に注目され, 米国NCIその他数施設でも現在新制癌剤スクリーニングをに利用されているものである. またDNA測定はフローサイトメトリーによる自動測定を利用しており, これらを用いた研究成果を以下の通り, 箇条書きする. 1.がんの原発巣内, 原発巣・転移巣間, 同一患者内の異所性転移巣間の制癌剤感受性を比較した時, それらは必ずしも同様ではなく, 比較的大きな径を持つ原発巣内の中心部と辺縁部との間や, 原発と転移の間に著明な相違を見出しており, 一方DNA測定ではそれらの相違は明らかでない. 2.胃癌・大腸癌などヒト新鮮腫瘍及び動物腫瘍B16黒色腫, ルイス肺癌とそれらのヌードマウス生着腫瘍の制癌剤感受性の比較検討では, 3〜5代までの継代初期には制癌剤感受性は不安定であるが,以降継代を重ねるに従い一定してきており, クローンの選択と考えられるが, DNA量, プロイディ型の検討結果は, こうした変化と関連せず, 両者は, 互に相関しない別の指標であることが判明した.
|