研究概要 |
(1)ラット脳血流可変モデルの開発-脳虚血の持続時間及び程度を自在に調節することのできる実験モデルの開発に成功し, その有用生を脳波, ^<14>C-IAPオートラジオグラフィーによる局所流量の測定によって検討した. 軽ハロセン麻酔, 気管内挿管, 調節呼吸下に, 両側外頸, 翼口蓋, 脳底動脈を閉塞後, 大腿動脈から潅流ポンプで導いた動脈血により両側総頸動脈領域すなわち脳循環系のみを体外循環させる本モデルでは, 潅流ポンプ流量を調節することによって, 正常脳波活動, 徐波化, 平坦脳波頭の実験条件が作製され, 各々に対応した局所脳血流量の像がオートラジオグラフィーによって得られた. (2)ラット前脳完全虚血モデルの開発とPast-Iscliemic No-Reflow Phenomenonの検討-作製が困難とされていたラット前脳完全虚血モデルの開発に成功した. これは上記の脳血流可変モデルの作製法に準し, 両側外頸, 翼口蓋, 脳底, 総頸の各動脈を閉塞し, 両側総頸動脈を再開通させる事により, 脳循環を再開させるものである. 本モデル30分虚血後のNo-Reflow域を検討し, 視床, 尾状核, 補設等の大脳深部に発生する傾向を認め, 更にマンニットールの虚血前投与がその抑制に有効と判明した. この結果は術中血行一次遮断時におけるマンニットールの脳虚血合併症予防効果を支持すると考えられた. (3)ポジトロン放出核種を使用した多重標識オートラジオグラフィーによる脳虚血後血流再開時における糖, 蛋白代謝の比較検討-ラット前脳完全虚血モデルによる, 30分虚血1時間血流再開時の代謝を^<18>FDG, ^<14>C-Leucineを用いた多重標識オートラジオグラフィーで検討し, 大脳深部において, 糖代謝, 蛋白代謝の解離が認められた. これはNo-Reflow現象の好発部位に一致し, 虚血後における糖, 蛋白代謝と局所脳血流量の関連が示唆された. 今後は組織像の検討も合わせて行い. 代謝変化を組織障害の関連を明確化する予定である.
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