研究概要 |
1.マウス皮下移植腫瘍に対する治療実験 ラウス肉腫ウィルス誘発マウス脳腫瘍細胞のマウス皮下移植腫瘍を用いてコントロール群, HpD単独(5-50mg/kgi.p.)投与群, 温熱単独(温浴43°C, 60分加温).群, HpD+温熱群(HpD投与24または48時間後加温)で経時的に腫瘍増殖曲線を求めて抗腫瘍効果を比較した. HpD単独ではいずれの濃度でも腫瘍増殖に影響を与えなかった. HpD投与量が20と50mg/kgの場合, HpDは温熱の抗腫瘍作用を増強させたが, 濃度依存性ではなかった. HpD投与後の温熱の開始時期は24時間後と48時間後とでは治療効果に差を認めなかった. 2.マウス脳腫瘍モデルを用いてのHpDの取り込みとその推移 腫瘍組織へはHpD投与4時間目頃より取り込みに差が認められ, 96時間後でも蛍光が観察されたが, 個々の腫瘍細胞間で取り込みに差が認められ, 不均一な蛍光パターンを示した. HpDの取り込み部位は腫瘍細胞の細胞質で, 核内には取り込まれなかった. 正常脳組織では, choroid plexusに取り込みが観察されたが, その他の部位にはいずれの時期にも全く蛍光が認められなかった. ただし, 腫瘍周辺に蛍光の認められる細胞に散在性に存在した. 腫瘍組織では, HpD投与量が多いほど強い蛍光が観察された. 3.マウス皮下移植腫瘍を用いての「HpD+温熱」治療後の組織学的変化 HpDの単独投与群ではコントロール群と全く差が認められなかった. 温熱単独群は加温直後から腫瘍細胞の核が濃染し, 血管は署明に拡張, 充血し, 小出血も認められた. 3日後には腫瘍細胞の変性が最も高度で, viableな腫瘍細胞は大腿深部の筋肉側に認められるだけであった. 1週間後になると残存腫瘍細胞が再増殖する傾向を認めた. 「HpD+温熱」群は温熱単独群とほぼ同様の結果であった.
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