研究概要 |
1.基礎研究 1)猫頭蓋内脳主幹動脈の経頭蓋ドップラー法による測定のさい, 測定可能な頭蓋の厚さの限界は約2mm±0.4であった. 2)ネコを用いて実験的に作成した全脳虚血, 脳幹虚血の各脳虚血モデルにおいて, 血流再開後の回復傾向を比較すると両者で著しい差を認めた. すなわち, SEP消失直後に血流を再開すると, 脳幹虚血の場合は速やかに回復したが, 全脳虚血の場合は, その皮質成分の回復は遅延し回復の程度も不完全であった. 3)脳幹虚血モデルではまずBAEPが消失し, 次いでSEPが消失した. 血流再開後はまずSEPが回復し, BAEPの回復は遅延した. 脳幹虚血の検出法としてBAEPはSEPに比べよりsensitiveである. しかしSEPが消失しても短時間のうちに血流を再開すれば, 脳幹機能の回復は望みうることからSEPは脳幹虚血発生のさい機能回復性のcritical pointを定めるためのパラメータとして最適と考えられた. 2.臨床研究 1)健常成人における経頭蓋ドップラーの中大脳動脈検出率は75%, 脳底動脈検出率は80%であった. 年齢別には高齢者ほど検出率は低くなる傾向が認められた. 2)頚部経皮的ドップラーで測定した血流と経頭蓋ドップラーで測定した血流は必ずしも相関しなかった. この傾向は若年者ほど著名であった. 3)頚動脈内膜剥離術例3例, バイパス術例5例で術前後での経頭蓋ドップラーによる頭蓋内血流動態変化を調べ血流動態的には血行再健術の目的を達成していることを確認できた. 術前後のSEP, BAEP, 誘発電位記録を頂点波潜時の短縮および頂点波の明確化により比較し, 神経機能面の改善が示唆された. 4)術中血流遮断時間の許容限界は脳幹機能に関しては13±6分, 大脳機能に関しては8±4分であった. 若年者ほど長時間の耐性が認められた.
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