研究概要 |
兎モデルを用いた水頭症の病理組織学的検索から, subependymal neural tissueの障害は, 水頭症発生の時期・程度により異なる. 又これに一致して中枢神経の障害程度が変わる事が判明した. この事は脳脊髄液(CSF)の頭蓋内吸収程度との相関が推測された. そこでこの基礎実験結果より, われわれが開発した小型CSF流量計を, ヒト成人水頭症の短絡管に組み込み, 流量測定を行った. 又CSF動態をより詳細に検討する目的で, RI cisternography, PSP髄腔内注入, 尿中排泄試験, EEG, 脳幹誘発電位, SPECT, Transcranial Doppler Sonogram(TCD). 頭蓋内圧測定(ICP)等を, 短絡術前・術中・術後で検索した. この検索が出来たのは11症例であるが, 脳幹誘発電位, SPECT, TCDと, 神経症状改善に有意差はない. しかしCT, RI cisternography, 髄腔内PSP clearance test, ICPの結果と, 短絡術後のCSF流量および神経症状の改善には, 以下の如き結果がえられた. 1)髄腔内注入PSP clearance testで, 70%以下の吸収障害を示す例では, 短絡管内のCSF流量は0.06〜0.35ml/分であった. 2)その中で, 短絡術後, 神経症状の改善が良いのは, 短絡管内を流れる髄液流量が毎分0.25ml以下で, 短絡管が術後CSF循環動態のmaior pathwayとならない例であった. なおICPは全例20mmlg以下である. 以上の事は, 産生されたCSFが, 生理的循環, 吸収経路より吸収される機構の残存を示唆している. 即ち臨床症状がほぼ同じでも, CSFの生理的循環動態の残存程度が, 短絡術後の神経症状改善に関与する. この事はsubependymal neural tissueの障害と関連するのであろう.
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