研究概要 |
1.X線学的研究 脊椎圧進骨折や大腿骨頚部骨折は老人に多いが, その骨折の頻度や形状は骨量や骨梁の状態に深い関係があることを見出した. 特に, デンシトメータによって, 微量な範囲も定量でき, 年令とともに, 次第に骨量が減少することが確認できた. また, 骨の変化や骨折の発生が骨代謝ホルモンと密接に関係し, 3大ホルモンの不均衡がその原因となり, 特に, 副甲状腺ホルモンの分泌異常が多大な影響を与え, 老人骨折に深く関与していることを見出した. 骨折と副甲状腺ホルモンの関係を示したのは, 本研究が初めてである. 2.実験的骨折治癒過程の研究 動物実験により大腿骨骨折を作製し, 副甲状腺摘除による分泌不全状態と副甲状腺ホルモン投与による副甲状腺ホルモン分泌過剰状態を作製し, 比較実験したところ, いずれの状態においても, 分泌正常状態に比し, 骨折治癒の遅延をきたした. これは副甲状腺ホルモンが骨折治癒に対し, 深く関与していることを示すものであり, 老人骨折の発生および治療の困難さの原因をある程度究明できたものであり, また, 治療のいとぐちを見出せたものと考える. 3.骨形成因子の研究 実験的骨折ならびにヒト骨折患者の骨折部より組織を抽出し, その組織を培養するとともに, 免疫抑制物質などを投与し, 骨形成因子の分離を試みた. 骨折部組織に骨形成因子が存在し, その物質を含む組織を他の部位に移植すると, その部位で骨形成および骨増殖をきたすことを発見した. このことは骨折治癒過程の解明と治療についてのこれまでの定説をさらに前進させるものである. 現在, この骨形成因子を単純分離すべく, 培養法などにより研究を継続している.
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