研究概要 |
膝内障の骨, 軟骨障害について基礎的実験および臨床的研究を行い, 新たな発見および知見を得, 今後の課題も明らかとなった. 本研究の基礎的知見は関節端の骨軟骨複合体の生体工学研究である. 本研究では軟骨, 軟骨下骨, 海綿骨のそれぞれ物性の異った複合体の剪断力破壊が力学的条件により異った損傷形態をとりうることを実験的に証明することが出来た. 又, その損傷形態も4型8種類に分類することが出来, これは, 各種膝内障にみられる骨軟骨損傷型と類似し, あるいは臨床的には証明しえないが, 望論上, 可能な損傷型を実験的に証明しえたことの意義は大きいと言える. 要約すれば骨軟骨複合体の剪断力による損傷メカニズムは, 衝撃スピードと衝撃エネルギーの両者によって支配され, スピードの遅い剪断力では, 在する関節軟骨には損傷が生じないにもかかわらず, 内部の軟骨下骨・海綿骨に損傷が生ずることが明らかになり, 臨床的には見逃す, 捕えがたい損傷型といえる. 実験的にこのような変化を証明することで, 膝内障における軟骨病変のメカニズムも同時に明らかになり, 膝蓋大腿関節適合不良にみられる軟骨下骨の異常陰影の意味ずけも可能となった. また, 離断性骨軟骨炎の発生メカニズムも体験値によるclosed subchondral fractureによるものと理解されるものといえる. 治療面からは, 発生メカニズムから考えられる予防的治療と, 発生した軟骨欠損に対する治療に大別される. 本研究では特に軟骨欠損に対する骨軟骨の移植の面について家兎をもちいた動物実験を行い, 同種移植の成功をうるための条件を知ることが出来た. なお現在継続して行っている研究に半月板の機能と欠損による軟骨障害について生体工学的に研究を行っており, 近く, 成果がえられるものと思う.
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