研究概要 |
1%ハロセン麻酔下の雑種成犬で実験を行った. 62年度は38℃で対照値の測定, 脳組織の採取(N=8)をした. 次に30℃の低体温下, 各群の測定, 検体の参取(N=13)を行った. 30℃でPco_2(37℃値)は, ハイパーカプニア群(HY群)は52.8mmHg, ノルモカプニア群(NO群)は45.2mmHg, ハイポカプニア群(PO群)で34.3mmHgであった. 1.動脈血pH(37℃値)は, 対照値に比べHY群で7.21, NO群で7.24, PO群で7.33と低下した. 髄液のpHはそれぞれ7.27, 7.4, 7.39と, 血液に比べアルカリ側に位置した. しかしpHセンサーによる脳皮質のpHは6.8, 6.45, 6.74とより酸性を示した. 2.心拍出量は対照値の54.5, 62.5, 43.1%に低下した. 38℃に比べ血圧, 脈拍も低下, 減少したが, 循環面で各群間に差はない. 3.脳血流(CBF)は, それぞれ対照値の86, 71.8, 38.3%に低下し, 以前発表したように低体温時もCBFはPco_2の変化に相関する事を示した. 4.全身の酸素消費量は, それぞれ対照値の45.2, 47.4, 48%に低下した,脳皮質酸素消費量は106.4, 77.3, 84.9%となり, 低体温時には全身に比べて脳皮質の酸素消費の減少の割合が小さかった. 5.乳酸, ピルビン酸, L/p比, 髄液のカリウム値は, 対照値との間で, また群間にも差はない. 6.脳皮質組織中のATP濃度は38℃で1.35μmol/l, 30℃でそれぞれ1.53, 1.29, 1.29μmol/lと差はない. 同組織のEnergy charge potentialは38℃で0.89,30℃でそれぞれ0.91,0.85,0.86だった. 5, 6の結果から, 30℃の低体温で各群とも脳皮質の虚血や代謝の異常はなかったと考えられる. 以上, 30℃低体温の実験結果からは, 脳代謝の面からみた至適酸ー塩基状態は特定できない. 現在30℃の各群の実験を継続するとともに, 20℃低体温下の実験を開始した. さらに38℃に復温した状態の実験を予定している.
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