研究概要 |
劇症肝炎を除く複合臓器不全(3〜6臓器)患者6名での知見は, 意識レベルの低下に伴い脳波の徐波化を認めた. 脳波マッピングでも徐波化を示したが, 部位変化は著明でなかった. 聴性脳幹反応による脳幹部の検索では, 各波の消失や潜時の延長を認めた. 脳血流量, 脳酸素消費量, 脳ブドウ糖消費量は当教室の健常者の正常値がそれぞれ46,3.1(単位:ml/100g/分), 5.0(ml/100g/分)であるのに対し, 26,1.2(ml/100g/分), 2.7(ml/100g/分)であった. 血漿アミノ酸は敗血症患者17例, 劇症肝炎患者11例で測定し, Glasgow coma scaleおよびHockadayの脳波分類との相関を調べた. 意識レベル, 脳波分類ともに, 敗血症群より劇症肝炎群で多くの項目で有意な相関を示した. 両群ともアミノ酸総量が著明に増加し, 分枝鎖アミノ酸と芳香族アミノ酸との比は減少した. 脳血流量測定時の興奮性神経伝達物質(アスパラキン酸+グルタミン酸)および抑制性神経伝達物質(GABA+グリシン)の脳動静脈含量較差は少数例のため, 症例を増やして検討する必要がある. 意識は敗血症では致死的状態になるまで消失しなかったが, 劇症肝炎では急激に低下して消失する症例が多かった. 頭部CTでは軽度の脳萎縮を認めた以外には特記すベき所見はなかった. 生存した症例では脳波の速波化, 聴性脳幹反応の各波潜時の回復, 意識レベルの向上がみられ, 1例は軽快し, 転院後に社会復帰した. 本研究は臨床研究であるため, 脳局所の変化は解らず, ラットで敗血症による複合臓器不全モデルを作成し, 局所脳ブドウ糖代謝率, 脳内受容体の変化なども検討している.
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