研究概要 |
1)ヒト前立腺部尿道から外尿道括約筋を電子顕微鏡を用いて観察した. 外腺部尿道平滑筋層内の神経末内の神経線維はその大部分が有鞘無髄であったが, シュワン細胞に被われた神経軸索はその有芯小胞の性状からアドレナリン作動性の自律神経枝と思われた. 外尿道括約筋部(EUS)では横紋筋細胞間に同様の有芯小胞を有し, アドレナリン作動性と思われる自律神経枝を認めたが, この神経枝と横紋筋細胞は古典的神経筋接合ではなくいわゆるSurface junctionを呼ばれる接合様式を示していた. 2)ヒトEUSは3種類の横紋筋すなわち2種類の赤筋と1種類の白筋より成っていた. 3)脊損者のVURは腎萎縮と強い関連性を示し, また排尿時のEUSの動態はVURおよび腎萎縮の何れとも強い関連性を示した. すなわち排尿時にEUSの弛緩が得られないいわゆるDSDをその程度強弱により3段階に分類するとDSDの強い群ほどVURのgradeも強度なものが多く, 腎萎縮の程度も他群に比し強い傾向を示した. またradical TURPはDSDの軽減を伴ってVURのgradeの改善・消失を招き, 腎萎縮の予防にも役立っていた. 4)Radical TUR-Pは脊損排尿障害の治療法として92%以上の治療効果を上げたが, その作用機序は種としてDSDの軽減・抑制に起因するものと考えられた. その他complianceの上昇, hyperreflexiaの改善なども伴って術後尿失禁を来す事もなく排尿障害の治療には極めて有効な治療法と考えられた. 5)神経因性膀胱のEUSは明らかに尿道周囲横紋筋とは機能的差異を示し, EUSのみがα-交感形刺激にて活動亢進を示したが, これがDSDの成因と深く関連しているものと思われた.
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