研究概要 |
昭和61年度の計画調書に述べたように, 本研究の目的は, ヒト黄体機能を直接反映すると考えられる性ステロイド産生に黄体を構成すると2型の細胞(顆粒膜黄体細胞と考えられる大型のL細胞および莢膜黄体細胞と考えられる小型のS細胞)がどのように寄生しているか, 又, ヒト黄体のステロイド生合成系の調節にどのような因子が関与しているかを, invivcとinvitroの両面から総合的に解明し, よって, 不妊症の重要な原因である黄体機能不全の診断・治療に資することにあった. これら黄体機能の生理的調節維持機構に関し, 以下に述べるように, いくつかの重要な新知見を得ることができた. 先ず, invitroにおいて, ヒト黄体のLおよびSの両細胞が, 卵胞における顆粒膜および内莢膜細胞と同様に, ステロイド産生において協調関係にあること, 具体的には, L細胞はS細胞に比し2倍のプロゲステロン産生能および芳香化活性をもつこと, しかし, アンドロゲン産生能は逆に1/2であること, 又, hcGへの応答性はS細胞にのみ存在する(アンドロゲン, プロゲステロンの産生増加)が, 逆に, アンドロゲン基質存在下でのエストロゲン産生能(=芳香化活性)は両細胞が有するものの, FSHに対する芳香化活性増加の応答性はL細胞にのみ存在することを証明した. 更に, ブタ顆粒膜細胞の黄体化およびプロゲステロン産生能が, インターロイキンー1(IL-1)によって抑制されることを証明し, 黄体機能調節因子として, 従来全く知られていなかったIL-1が黄体機能調節に関与している可能生を示した. さらに又, invivoにおいては, 正常黄体期婦人にFSHを投与すると, エストラジオールの血中レベルが増加することを見出し, はじめて, 黄体機能維持にFSHが関与している可能性を示し, これは, 上記のinvitro研究の所見とも一致するものである. 以上, 本研究の成果は, 黄体機能調節機構の解明に資するところ大であると考えられる.
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