研究概要 |
1.声帯振動記録を目的とした超高速画像記録装置の実現とオンライン処理ヒステムの開発 側視型硬性鏡を改良してカメラに装着し, フィルム圧定板部に撮像素子を設置して画像情報の入力部とした. カメラのシャッターを切ることによってセンサからの高フレームのビデオ信号を得る. この信号を画像処理装置のイメージメモリに格納したのち, モニタ画面に連続表示した. 定常母音発生時の記録が安定化した段階で, 子音を含む連続発話音声を記録するために, ファイバースコープにカメラを接続する方式を完成させた. 2.正常成人の定常母音発生時の声帯振動の画像解析 正常成人の地声発声時の観察では, 声帯縁を下唇から上唇に向かういわゆる波状運動が同定された. また, 毎回の声門開閉のパタンには変動があり, これが音声の自然性に対応している可能性が推察された. 3.正常成人の過渡的発声条件における声門動態の観察 無声破裂音の入り渡りにおいては, 声門振動は持続するものの開大期の振幅が徐々に大となり, これに対応して声門閉鎖が不完全となっていき, ついで無声区間に対応する声門開大状態に移行することが観察された. 無声区間から後続母音への出渡りにおいては比較的急速に声帯の励振が開始された. 4.病的声帯振動の観察 一側声帯に病変があり, その側の声帯縁の質量が非対称性に大きいような例では, 病変部の振動が他の部より遅れるために, 声帯縁の前後方向に振動時の位相ずれを来たすことが観測された. この所見は, とくにビデオ画像による動的表示において, 明瞭に観察された. 本システムをパーソナルコンピュータと組み合わせることにより実用的な検査装置として発展させる見通しが得られた.
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