研究分担者 |
伊藤 壽一 (伊藤 寿一) 京都大学, 医学部, 講師 (90176339)
八木 伸也 京都大学, 医学部, 助教授 (00093336)
高橋 晴雄 , 医学部耳鼻咽喉科, 助手 (90171511)
林 正彦 , 医学部耳鼻咽喉科, 助手 (40173033)
山本 悦生 , 医学部耳鼻咽喉科, 助教授 (10026875)
|
研究概要 |
ネコでの実験により, 耳管からの中耳貯留液の排泄は, 液が少量あるいは粘稠な場合は線毛機能により, 液が大量あるいは粘稠度が低い場合は主として口蓋帆張筋の作用によって行なわれ, 中枢あるいは末梢で口蓋帆張筋の作用を廃絶した場合, 中耳に約-200mmH_2Oの陰圧が形成される事がわかった. しかし, 陰圧のみで中耳に滲出液産生を見るには, より高度の陰圧の長時間の持続が必要で, 滲出法中耳炎の発生には耳管の動的換気能障害に加えて炎症による液体産生が必要で, この液体が耳管から筋性および線毛性に排出される事により中耳の陰圧化が進行し, 遷延し滲出性中耳炎の病態が形成される事がわかった. またこの時形成された中耳の陰圧, 鼓膜の陥凹は中耳のみでなく内耳にも影響を及ぼし, 一過性の感音性難聴や平衡機能障害をきたし得る事も明らかになった. 中耳疾患による内耳障害については今後さらに研究が必要と考えられる. 耳管機能検査に関しては, 従来の音響耳管検査に加えて中耳圧負荷を行ない, 耳管の閉鎖障害としう病態を客観的に把える事が可能になり, またこの病態が中耳真珠腫や口蓋裂例に多く見られる事が判明した. 滲出性中耳炎, 慢性中耳炎, 真珠腫などの中耳疾患の多くでは従来の予想に反して耳管の器質的閉鎖, 狭窄は少なく, むしろ燕下による耳管の動的換気能の障害が高率に見られる事がわかった. 治療に関しては, 耳管機能, 特に中耳に負荷された陽圧を燕下で解除できるかという, いわゆる陽圧テスト良例では慢性中耳炎手術の不成功の率が多く, この様な症例の手術には細心の注意を要する事がわかった. 滲出性中耳炎に対するアデノイド切除の有効性が再確認され, 新しい治療法として薬剤の経鼓膜的イオン浸透法の有用性を確認した.
|