研究概要 |
研究方法:C3Hマウスの胎仔から取り出した鐘状期の下顎第一臼歯歯胚を研究対象とした. まず, 1.レーザの歯胚は対する生物学的効果があるかをみるために, 取り出して培養溶中に浸した状態の歯胚全体に, ガラスファイバーで導光した連続波Nd:YAGレーザを, 出力10W, 照射スポット径約2mmの照射条件で5分間照射したのちに, 同系マウス腎臓被膜下に移植培養し, 経時的に移植歯胚を回収し, 非照射歯胚を移植培養した対照群と組織学的に比較検討した(前歯胚照射実験). 次に 2.同様に取り出した歯胚の(1)cervical loopと(2)歯乳頭に照準を合わせて「レーザ・マニプーレーターを組込んだ細胞工学用顕微鏡」で導光したヘリウムネオンレーザを照射エネルギー密度18μW, Focused spot size Φ10μmで10分間照射後, 全歯胚照射実験と同様の方法で比較検討した(局所照射実験). 研究成果(新たな知見)および今後の研究の展開に関する計画:1.全歯胚実験では, 照射歯胚は非照射歯胚に比較して間葉系組織, 特に根尖セメント質の形成が有意に多い傾向を示し, セメント質「増殖」性病変と考えた. 一方, 上皮成分の発生経過には有意の差は認められず, 対照と同様の歯冠形態を形成した. 2.局所照射実験では, (1)cervical loopと(2)歯乳頭いずれの場合においても, 培養歯胚の形態形成・成長発育は, 対照群との間に有意の差は認められなかった. 実験1では, Nd:YAGレーザが少なくとも歯胚の間葉系組織に影響を与え得ることを示すものであり, 従来の歯根・歯根膜の形成に関与するcervical loopが歯胚のレーザ感受性のhot spotであることを示唆するものであったが, これを照射の対象としても(実験2), なんらの形態学的変化を得られなかった. これにはレーザ線源が異なることと照射エネルギー量の違いなど, 照射条件に問題があるものと考え, これらの点を改善して研究を展開している.
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