研究概要 |
本研究は, 人為的に露出させたラット臼歯歯髄の自然治癒経過中に形成される実験的骨様象牙質, および咬合開始以前のラット切歯先端部に認められる生理的骨様象牙質の石灰化気質と, その形成に関与する細胞の超微構造を明らかにすることを目的として遂行されたものである. 結果 : 骨様象牙質気質は, 微細粒状の基礎質より成る部分(非コラゲン性基質)と, 正規のコラゲン線維より成る部分(コラゲン性基質)の混成により成り立っている. 非コラゲン性基質の形成には, 細胞質小器官に富む大型の類円形ないし立方形細胞が関与している. この細胞は, 偏在する核と発達したゴルジ装置, 豊富な粗面小胞体をもち, アパタイト結晶を入れた細胞質小体(結晶含有小体)を有することが特徴である. またゴルジ要素は, cytosome-3,-4,-6および多胞小体と共に高い酸性ホスファターゼ活性を呈する. アルカリ性ホスファターゼ活性は主として細胞膜に局在しているが, cytosome-6にこれを認めることもある. 上に記した結晶含有小体は, 限界膜と細胞膜の融合により, あるいは細胞の変性崩壊により細胞外に放出され, 骨様象牙質の非コラゲン性石灰化気質を構成するようになる. このような非コラゲン性石灰化基質と結晶含有小体は, 酸性ムコ多糖体の硫酸基に由来すると考えられるSを多量に含んでいる. 考察 : 以上の所見は, 骨様象牙質の非コラゲン性基質は, コラゲン性基質と形成経路を異にし, しかもそれ自身石灰化し得ることを示している. 同気質は, 超微構造的にはコラゲン線維間を占めているいわゆる基礎質と同様のものである. 従って, 両者が同じ物質とすれば, 今回の結果は, コラゲン性基質の石灰化には, コラゲン線維よりも, むしろ線維間基礎質が大きな役割を果たすという, われわれの従来の仮説を裏付けるものとすることができよう.
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