研究概要 |
歯周病の発症と進行に特定のグラム陰性菌が密接に関連することは繰り返し実証され, 歯周病の診断にも病巣に多い菌を見い出すことが必須になってきている. また近年歯周病原性菌による細菌性心内膜炎などの報告もあり, 局所細菌叢を把握する必要性が強調されている. さらに難治性歯周炎などに化学療法剤を投与すべきであることも明確となってきた. 的確な抗生物質を選択に際しても病巣の特定菌の感受性を検討することが必要である. 前年度の本研究実績報告書通り, 非選択培地に加えてBacteroides, Fusobacterlum nucleatam, Actinobacillus actinomcetemcomtitansの検出を目的として選択培地を用いた. Bacteroides intermediusは, 健康歯肉を持った局所, 歯齦炎および成人性歯周病の全ての病巣から分離することができた. また歯叢に占める本菌種の割合いもこの3グループ間で有意差がなかった. このことからB.intermediusの検出は, 歯周病の診断的価値を持つとは考えられない. 一方, Bacteroides gingivalisは, 健康歯肉の歯周局所に検出することができなかったが, 調べた10人の成人性歯周炎局所の局所材料中7人のものに検出できた. また歯齦炎のある患者5人中1人の材料にB.gingivalisを検出した. 統計学的にも, 成人性歯周炎とB.gingivalisの検出率および菌叢に占める割合いの高さは相関することがわかった. F.nucleatumは, 成人性歯周炎病巣で特別高い割合いを占めるということは見い出せず, A.actimomycetemcomitansは成人性歯周炎病巣局所からは分離することができなかった. 病巣細菌叢を培養法によって知ることに比べ, 特異血清を用いて螢光抗体法で検討する方が簡単で迅速に調べることができる. ウサギ免疫血清を用い直接および間接螢光抗体法で検討できる事がわかったので, 今後は病巣の菌の存在さらに治療後の消退を経時的に検討していく予定である.
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