研究概要 |
骨と象牙質の石灰化現象において主要基質タンパク質群が, それぞれの役割分担をしながら, 動的に協力的に機能していることを証明するのが本研究の目標である. 昭和61年度には, 象牙質, 骨の主要基質タンパク質の分析システムを確立し, ホスホホリンが骨牙質形成の進行と共に増大することを確認した. さらにIn vitro実験からこのタンパク質の特異な役割として石灰化前線において核形成の密度を増大させることにあることを示した. 本年度は, さらに核形成のメカニズムに迫るため, さきに我々が発見してホスホホリンのカルシウム沈殿性に対応する現象が, 骨の非コラーゲン性タンパク質においても存在するか否かを検討してところ, 予想通り骨のEDTA抽出, 脱塩後の水溶液は2mMのCa^<2+>の添加によって顕著な沈殿を生ずることを発見した. この沈殿は, Ca^<2+>30mMにおいて最大量に達し, それ以上のCa^<2+>濃度では減少し, 200mMにおいては消失した. この現象の生理的な意義と, 沈殿に関与する骨の基質タンパク質を追求した結果, 次の事実が明らかになった. (1)骨タンパク質水溶液のCa^<2+>による沈殿形成は緩衝液としてトリス塩酸(pH7.4)の場合1mMでは沈殿を生ずるが、(2)5mM以上では沈殿は消失した。(3)しかるにNaCl溶液中ではCa^<2+>なしで沈殿を生じ150mMNaClで最大となり、この沈殿も5mNトリス塩酸存在下で消失した。そこで150mMNaCl/5mMトリス塩酸で骨タンパク質を完全に溶解し、そこにCa^<2+>を加えたところ1mM以下のCa^<2+>濃度で顕著な沈殿を形成することがわかった。即ち生理的イオン濃度下でμMオ-ダ-のCa^<2+>を介した骨タンパク質の動的は構造変化を最初に補足することが出来た。高性能クロマトグラフィ-による系統的分析の結果、沈殿に関与するタンパク質が、オステオネワチンと62Kタンパク質の2種類である事をつきとめ、石灰化現象の鍵となる事実の一つを明らかにした。
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