研究概要 |
1.ウシ胎仔軟骨からの軟骨由来抗腫瘍因子の精製 ウシ胎仔軟骨の1Mグアニジン塩酸抽出物をアセトン分画(45〜65%)し, 限外3過により得た分子量2-30万の画分(粗CATF)を限外3過によりさらに分子量2-10万と10-30万の画分に分画すると, 血管内皮培養細胞に対する増殖阻害活性, B16メラノーマ固型腫瘍に対する増殖阻害活性, 及びニワトリ漿尿膜(CAM)での血管誘導阻害活性はいずれも後者にみられた. そこで分子量10-30万の画分をさらにDEAE-セファロースイオン交換クロマトグラフィーにかけ食塩濃度勾配で溶出すると血管内皮細胞増殖阻害活性は塩濃度0.3M付近に溶出し, 又, 比活性は約70倍に上昇した. さらに, この画分は強力なB16メラノーマに対する抗腫瘍活性とCAMにおける腫瘍血管誘導阻害活性を示した. 2.ウサギ肋軟骨初代培養細胞によるCATFの産生 ウサギ肋軟骨初代培養細胞の培養上清が血管内皮細胞の増殖を特異的に阻害し, また, B16メラノーマ固型腫瘍の増殖及び同腫瘍によるCAMの血管誘導を阻害することを見出した. すなわち, ウサギ肋軟骨培養細胞がCATFを産生していることが明らかとなった. 3.CATF産生培養細胞株の樹立 マウス肋軟骨成長軟骨の2代目の培養細胞より細胞株を樹立した. 本細胞は成長軟骨細胞の分化機能の指標である副甲状腺ホルモン応答性や高アルカリフォスファターゼ活性を有し, 無限増殖能を獲得している. 一方, ヒト軟骨肉腫からも軟骨細胞の分化機能を保持した培養細胞株を樹立した. 両細胞共にその培養上清中にはウサギ肋軟骨初代培養細胞の培養上清とほぼ同程度の血管内皮細胞増殖阻害活性が存在した. 従って, 両細胞ともCATFを産生しているものと考えられる.
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