研究概要 |
本研究においては, 硬組織形成に対する重金属の影響を検討する一環として, ラット切歯々髄内におけるポリアミン代謝に対するカドミウムを中心とする重金属の影響を追求した. (1)ラット切歯々髄内の各種ポリアミン代謝の量的関係は, 肝臓等と異なっており歯髄の組織学的な特異性によるものと考えられる. また, プトレシン量は日内リズムと考えられる周期的変動を示し, 摂食行為がそれを規定することが判明した. また, 歯髄内各種ポリアミン・ジアミンの量的関係が年令的成長により変化するが, 歯髄細胞のライフ・サイクルの延長による変化と推測した. (2)硬組織形成に影響を与える重金属の代表として, カドミウムを選び, ポリアミン代謝に及ぼす影響を検討したところ, その作用に雌と雄の反応の違い, すなわち, 性差を認め, その機序を検討した. 実験動物および培養歯髄細胞を使用し, in vivo, in vitro両面からその影響を検討したところ, 性差はカドミウムの全身的作用に由来するものであり, 歯髄細胞の感受性そのものには性差が認められない結果を得た. (3)歯髄内における, ヒスタミン・ポリアミンの生成酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素およびオルニチン脱炭酸酵素についてカドミウムの他, LPSやチオアセトアミド投与時の影響を検討, 興味ある結果を得た. 今後, これら薬物と重金属の併用時の歯髄内ジアミン・ポリアミン代謝の変動を検討する予定である. また, ヒスタミン・ポリアミン代謝についての研究の一環として,口腔内組織の一つである舌組織への化学的発癌剤塗布時の変化を検討, 併せ報告した. (4)本研究の過程において, ヒト唾液中に存在する塩基性蛋白が肥満細胞からのヒスタミン遊離作用を有することを杉山が発見, その蛋白が分子量3015であり, アミノ残基24個のヒスチジン豊富な蛋白であることを併せ発見した. 現在, 本蛋白については, 一般研究(C)において研究中である.
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